伊豆半島ジオパーク産品認証制度に認められた価値
「持続可能な開発」と聞くと、環境に優しいやり方で社会や経済を回していくことを連想されるのではないでしょうか。でも実は、文化も重要です。自分たちの文化を大切にし、誇りを持って表現することは、私たちひとりひとりの心を豊かにします。身近な文化が守られれば、地球上に色とりどりの文化が息づくことでしょう。
地域に受け継がれてきた知識や技術を、しなやかに変化させながら受け継ぐことを通じて、次の世代が健やかで心豊かな暮らしを叶えよう。伊豆半島ジオパークは、そのような思いを「記憶の継承」として大切にしています。
形のある文化と形のない文化
私たちは、特に「形のない文化」を受け継ぐことを大切にしています。形のある文化と形のない文化は、体と心のような関係に例えられます。例えば、神社を考えてみましょう。立派な神社の建物があっても、信仰の場としての役割が失われ、儀式や行事もないとしたらどうでしょうか。
信仰の場に受け継がれた芸能や祭礼行事は形のない文化、言い換えれば心にあたります。地域に受け継がれた知識や技術も形のない文化です。こうした形のない文化は、人々の出会いや交流を通じて、静かに雪が降り積もるように、長い時間をかけて地域に根付いたものです。地域に根付いた形のない文化は、次の出会いや交流を通じて、新たな文化を産む力ともなります。
今回手にしていただいた産品は、こうした地域の「心」を表す品物として認定されています。お求めいただくことは、儚く失われやすい地域の「心」を受け継ぐ助けとなります。

河津町・大鍋地区に伝わる伝統芸能「大鍋子守神社のお神楽」
文化と地域の自然環境
郷土料理や工芸品も大切な「形のない文化」です。多くの場合、その土地の材料が使われます。材料の栽培や採集の方法は、地域の自然環境を写す鏡です。例えば、どこで栽培するかは地形や土壌などが重要です。また栽培や採集の方法は、何世代もかけて地域の自然と付き合う中で人々が積み上げた工夫の結晶です。
私たちの目に触れる郷土料理や工芸品の陰に、暮らしの中で地域の自然と付き合い、重ねた試行錯誤と、人と人が出会い、交わり、智恵を学び合った長い歴史が秘められています。今ある郷土料理や工芸品は氷山の一角のようなもの。この産品との出会いをきっかけに水面の下に広がる豊かな地域の歴史を覗いてみたいと感じていただければ、これほど嬉しいことはありません。

松崎町石部地区の「石部の棚田」
記憶を継承するということ
芸能であれ、民話や工芸であれ、人類のさまざまな文化に優劣はなく、「みんな違って、みんないい」という考え方が、世界で広く支持されています。また、私たち個人についても、すべての人は自らの文化を楽しみ、表現し、次世代に伝える権利を持っています。そして、一人一人が持つ種を大切に育てることは、今ある文化をさらに豊かに、そして未来に向けて新たな文化を産み出すことに繋がります。これは文化の「再創造」と呼ばれています。
再創造は、コミュニティが文化を守り受け継ぐ上でも大切な考え方です。変化を一切許さず、ただひたすら昔と同じものを繰り返すことは窮屈でもあり、退屈でもあります。そのようなこだわりが強すぎると、文化は形だけの干からびた抜け殻のようなものになってしまいます。文化を活き活きと受け継ぐには、絶えず姿を変えながら、今を生きる私たちの才能や創造性を反映しながら、柔らかにしなやかに再創造を繰り返すことが大切です。
「記憶の継承」に認証された産品は、地域の文化を守り、地域の記憶を受け継ぐ人たちの心を豊かにするものなのです。
西伊豆町田子地区の加工場
参考文献:
辻修次. “ジオパークと文化多様性-活性化と継承の仕組みづくりに向けて-”. ジオパークから始める地域づくり・人づくり. 佐藤真久・辻修次・山本隆太(編). 静岡, 静岡新聞社. 2024, pp.106-122.
記憶の継承 に認証された産品を購入できる場所
