黄瀬川(きせがわ)は愛鷹山(あしたかやま)と箱根に挟まれた谷を流れ下り、狩野川に合流する川です。
鮎壺の滝より上流の黄瀬川の川底のあちこちには、約1万年前の富士山の溶岩(三島溶岩)が露出しています。こうした溶岩の段差にはいくつもの滝ができていて、ここ牛ヶ淵(うしがふち)もそうした滝の一つです。
牛ヶ淵の近くには、かつて長久保城という戦国時代の城がありました。
黄瀬川と桃沢川に囲まれた愛鷹山の尾根の上に位置したこの城は守りも固く、かつての国境付近を見張る重要な戦略拠点でした。そのため、多くの武将がこの城をめぐって争奪戦を繰り広げ、そうした戦にまつわる物語も、牛ヶ淵には伝えられています。
16世紀に武田軍がこの地域を攻めた際、長久保城にいた荻姫(おぎひめ)が逃げる途中に牛車(ぎっしゃ)もろともこの淵に転落し、命を落としてしまったということです。