北江間横穴群(国指定史跡)は、海底にたまった火山灰の地層に掘られた遺跡です。
伊豆半島北部の田方平野周辺では、7世紀ころから横穴墓がつくられるようになり、数多くの横穴墓が現存しています。
狩野川の左岸側(西側)では、海底にたまった火山灰の地層の中に多く確認されています。一方で、右岸側(東側)の北部では、箱根火山の火砕流堆積物の中に多くの横穴墓が見られます。
これらの地層ができた時代はまったく異なっていますが、どちらも掘りやすい地層で、石材としても使われてきました。
北江間横穴群は7~8世紀ころにかけて利用されていた横穴墓群です。横穴墓には内部に石棺(せっかん)が据えられているものもあれば、石櫃(せきひつ:火葬骨を入れるもの)が納められていたものもありました。こうした違いは、この地域の埋葬方法が土葬から火葬に移り変わっていったことを反映していると考えられています。
なお、出土した石棺の中には「若舎人(わかとねり)」と記されたものも確認されています。舎人は天皇に使える役人のことで、そうした重要な地位にあった人物がこの地にいたことを示す証拠でもあります。現地に置かれている「若舎人」の石棺はレプリカで、本物は伊豆の国市役所横の「
あやめ会館」の1階に展示されています。
横穴群の分布や、そこで見られる地層を観察することで、大地の成り立ちとそこで暮らしてきた人々の歴史の一端を垣間見ることができます。
横穴墓は、発掘したままの姿で観察することができます。
地域の歴史を今に伝えるとても重要な遺跡ですので、無理に登ったり傷つけたりしないように気をつけてください。