伊豆半島ジオパーク Izu Peninsula UNESCO Global Geopark

伊豆半島ジオパーク プレスリリース

現地審査報告

2022.10.20

ユネスコ現地審査報告

伊豆半島ユネスコ世界ジオパークの再認定に向けた現地審査が10月10日から14日にかけてゲア・ノルベイサ・ユネスコ世界ジオパーク理事長のクリスティン・ランネスさん(ノルウェー)と、ランカウイ・ユネスコ世界ジオパーク地質学者のラサヌバリ・アズマさん(通称、ラサさん、マレーシア)。2人は10日に伊豆半島入りしました。5日間の現地審査を終え、14日に講評と記者会見をして離日しました。

審査のポイント

伊豆半島ジオパークは2018年4月に世界認定されました。本来であれば、4年ごとに現地審査を経て世界認定継続可否が問われます。昨年中に現地審査が行われるはずでしたが、コロナ禍によって審査員が入国できない状態に陥ったため、1年遅れで実施されました。

審査は、①4年前の世界認定時に示された9項目の「指摘事項」を受けて、どれだけ改善されたか②この4年間、ジオパーク活動に着実に取り組んできたか-の2点がポイント。事務局では、これに答えることを重点に審査先を選定し、案内するジオガイドと説明内容を詰めてきました。前回(2017年)の現地審査では、伊豆半島の地質的価値を立証することにウエートを置き、審査先は16カ所に上りました。今回は、地質的価値よりも人々の活動を示すことが重点となっており、審査先も10カ所(ジオサイト7カ所、ビジターセンターVC3カ所、その他2カ所=重複を含む)に絞りました。

14日の審査員講評では、審査員は今後、詳細に検討して「指摘事項」を出す意向を示しました。菊地豊副会長は「再認定を確信している」との自信を示しました。以下、現地審査のもようをお伝えします。

10月10日

概要説明(16:00~17:00、伊豆市内ホテル)

朝日克彦研究員が伊豆半島ジオパークの全体像と、11日以降のスケジュールを説明しました。さらに、2018年の世界認定後の取り組みについて説明し、若干の質疑を行いました。

10月11日

概要説明(9:10~11:40、ジオリア)

美伊豆の豊岡武士会長は「伊豆半島は海、山、温泉など多様性に富んでいる。『南から来た火山の贈りもの』という伊豆半島ジオパークのテーマはそういう伊豆の人々の思いをよく表している。美伊豆の合言葉は『伊豆は一つ』である。美伊豆は多様性の中で、まとまって美しい伊豆半島を盛り上げていきたい」とあいさつしました。さらに、辻修次研究員が世界認定時に示された「指摘事項」の項目ごとに対応を説明しました。審査員からは、今年4月の組織統合、パートナー事業者との協定やどのような連携事業を展開しているかという点に質問が多く出されました。

韮山反射炉(12:50~13:40)

反射炉を審査先に選んだのは、同じユネスコのプログラムであるジオパークと世界文化遺産との協働をアピールすることが狙い。審査員はガイダンスセンター前で磯崎猛伊豆の国市副市長の出迎えを受けました。磯崎副市長は「ジオパークとは昨年12月、包括連携協定を結びました。世界文化遺産とジオパークが双方の特徴を生かし、相乗効果が出ることを期待しています」とあいさつ。次いで、工藤雄一郎市文化財課長の案内で反射炉を見て回りました。審査員からは「なぜこの場所に反射炉が建てられたのか」「建造当時の働いていた人たちの記録は残っているのか」といった質問が出ました。さらにジオパークの研究員を交えて、今後、どのように連携を深めるかをめぐって意見交換しました。

わさび田(14:30~16:30)

審査員はE-Bike(電動アシスト自転車)を使って、安藤裕夫ジオガイドの案内で伊豆市筏場のわさび田ツアーを体験しました。小嵐橋ではわさび生産者・塩谷美博さんが収穫したばかりのわさびの株を手に、栽培方法や歴史などを説明。審査員は初めて見るわさびに興味津々で、「何種類ぐらいあるのか」「種類ごとの見分けはつくのか」「花は咲くのか」といった質問が矢継ぎ早に飛びました。小嵐橋では、朝日研究員が、世界農業遺産と協働して制作したジオ解説板を紹介しました。

さらに、わさび漬け屋・たか惣に寄り、高村範利さんの指導の下で、実際にわさびのすりおろし体験を楽しみました。ピリッとするわさびの辛味に驚きつつも、さつま揚げなどの食材につけて楽しんでいました。

10月12日

湯ヶ島文学ツアー(8:50~9:40)

審査員は文学の里づくりが行われている湯ヶ島地区で文学ツアーを体験しました。鈴木まき子ジオガイドは、ノーベル賞作家・川端康成ゆかりの地であり、井上靖が少年時代を過ごした土地であることを紹介。さらに、あすなろ会の岡田明子世話人が上の家で、井上靖の小説「しろばんば」を取り上げ、「井上先生の少年時代の作品で、先生が訪ねた場所が多く描かれている。先生を敬愛して、みんなで『しろばんば』をよく読んでいる」「劇団もあるし、この上の家で手芸教室、ミニコンサートもやる。ジオと協力してジオ文豪カフェも開いている」などと説明しました。これに対し審査員からは「この家にはだれか住んでいるのか」「劇団はどこで上演しているのか」などの質問が次々と出た。その後、審査員は再び鈴木ガイドの案内で、湯道の秋の散策を楽しみました。

黄金崎(11:15~12:40)

星野淨晋西伊豆町長の出迎えを受けた審査員は、西伊豆町立賀茂小学校の6年生8人が黄金崎でジオ学習を受けている様子を見学しました。小学生を案内した土屋晴樹ジオガイドは眼前の岩が馬そっくりであることを引き合いに、西伊豆町には動物の形をした岩がほかにもあることを紹介し、「奇岩動物園と言われている」と、小学生たちに「地元のお宝」に目を向けるように促しました。さらに駿河湾を臨みながら、「深さが2500mもある」と説明すると、子どもたちは目を丸くしていました。審査員は通訳を介して、説明を聞き、熱心にメモしていました。さらに、西伊豆町VC「こがねすと」に移り、伊豆半島ジオガイド協会の仲田慶枝会長から、こがねすとの運営やガイド協会の活動内容の説明を受けました。

堂ヶ島(13:45~14:45)

審査員は遊覧船でジオクルーズを体験しました。仲田ジオガイドはときには自身のエピソードを交えながら、審査員がともに地質学者であることから、船上から見える海底土石流など海底火山の痕跡をきっちり説明、審査員はしきりにシャッターを押していました。船がクライマックスの天窓洞に進入すると思わず歓声が上がりました。さらに遠藤大介研究員が天窓洞近くの白い崖の見える船上から、ここが海底火山研究のきっかけになった場所であることを解説し、審査員は熱心にメモを取っていました。

10月13日

南伊豆オーシャンパーク(9:30~10:40)

オーシャンパークは2019年にオープンしました。岡部克仁町長の出迎えを受けた審査員は町商工観光課の鈴木英俊主事から町の取り組みを聞きました。鈴木氏は「行政と民間の役割分担を明確にした上で、今後もジオパーク活動をしっかり推進していきたい」などと強調。審査員からは「町がつくったポスターはどこに貼り出しているのか」「どのようにジオリアと南伊豆ビジターセンター(VC)の連携をとっているか」などの質問が出ました。次いで池野玉枝ジオガイドの案内で、強風の中、石廊崎ガイドツアーを体験しました。審査員は灯台に関心を持ったようで、「建造当時、灯台の明かりには何が使われていたのか。焚火か油か」などと質問、池野さんは「なたね油を使っていた。当時は自動化していなかったので、毎日灯台まで歩いてきて、火を点けていた」などと答えていました。

ビーチクリーニング(11:30~12:30)

審査員は道の駅開国下田みなとで、青木真由里ジオガイドからビーチクリーニング(海岸清掃)活動の話を聞いた上で、清掃の際、拾ったプラスチック片を材料としたアクセサリ作りを楽しみました。さらに、斎藤武ジオガイドは「1000年後の子どもたちにキレイな地球をプレゼントしよう」を合言葉に伊豆ジオスクールを始めたことを紹介。「子どもたちがごみを拾う姿を見て、一緒に参加したいという親が出てきた」と説明すると、審査員は「子どもの姿を見て親が変わるというのは非常に興味深い」と評価しました。

伊豆急SDGsトレイン(13:09~13:54)

伊豆急が今年7月から運行を始めたSDGsトレイン「ツナグデンシャ」は伊豆半島ジオパークにおけるパートナーシップのシンボル的存在。審査員は伊豆急下田駅から伊豆高原駅まで、同トレインに乗車した。車内では鈴木正人伊豆急ホールディングス営業推進課長と辻修次研究員が同トレインが作られた経緯や車内展示などを説明。下田駅では松木正一郎市長のお見送り、伊豆高原駅では小林秀樹伊豆急HD社長の出迎えを受け、現地審査に花を添えました。

ジオテラス(14:00~14:20)

伊東VC「ジオテラス」の案内板は伊東高校城ヶ崎分校の高校生が制作したもの。高校生からは「伊東の自然を楽しんでください」とのビデオメッセージが送られていました。審査員はビデオを見ながらしきりにうなずいていました。さらに関みどりジオガイドの案内で館内を見学。審査員からは「年間訪問者数はどれくらいか」「1カ月ごとに展示替えしている企画展で、展示内容を決めるのはだれか」といった質問が出ました。

大室山(14:45~16:00)

大室山は今回の現地審査の最終訪問先。まず、麓の解説板前で、まちこん伊東の田畑朝惠ジオガイドが地元の募金で更新したことを強調。山頂では、山崎仁ジオガイドが「ここは山と地域と人々の生活が一体となっている場所である」と、美しい景観が地元・池区の山焼きによって保たれていることを説明しました。二人の説明はともに、大室山の保全・活用が地元コミュニティの力によって支えられていることをアピールものとなりました。

審査員は山焼きに並々ならぬ関心を示し、「どうやって山を焼くのか」「山焼きが植生に与える効果にはどういうものがあるか」などと熱心に質問。山崎ガイドに代わって、高橋義典池観光開発社長が山焼きの手順を詳細に説明しました。審査員は「来年の山焼きのときには是非来たい。最後の場所にとても満足している」との感想を述べました。

10月14日

総括・講評(8:15~11:45、ジオリア)

ジオリアの円卓テーブルを囲みながら、前日夜に続いて審査員との質疑・意見交換を続行しました。今後のツーリズムの在り方、ローカルプロダクツ(地場産品)をテコとした地域経済活性化などが話題となり、ラサ審査員は「コロナ禍によって、ツアー形態も変わってきている。持続可能なものとしていかなければならないだろう」と指摘した。ランネス審査員からは、今回の現地審査を詳細にレビューして、後日、「指摘事項」を提示する意向が示された。

記者会見(11:53~12:02)

現地審査を終えた審査員はジオリアで、記者会見(ぶら下がり)に臨みました。記者から「最も印象に残ったことは何か」と聞かれたラサ審査員は「数多くのVCが設置されていることと、ジオガイドの活動が素晴らしい」と答えました。ランネス審査員はジオガイドの活動に加え、「行政、パートナー企業と一緒に活動していることが素晴らしい。それと、トレインにも乗ったし、SDGsに積極的に取り組んでいること。ジオパーク活動が地域経済にも貢献していると感じた」と答えました。

続いて記者会見した菊地豊副会長は再認定の手ごたえを聞かれ、「ばっちりだ。再認定は確実だと確信している」と自信を示しました。

 

以上

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