2021.03.15
伊豆半島をはじめとするジオパークには、景勝地となる海食凹地形が数多く存在する。本研究では、岩石海岸に形成される海食凹地形をノッチ(波食窪)・ケーブ(海食洞)・アーチ・トンネルに分類したいうえで、海食崖の地質条件(岩石強度および層理・断裂等の岩石構造)と対応づけることで、その形成条件を調べた。その結果、ノッチの形成には構造岩石が低強度(シュミットハンマー反発値<40)であることが最も重要である一方、ケーブ・アーチ・トンネルは傾斜30°の岩石構造(縦構造)が形成要因となる傾向が示された。ただし、崖面に対する縦構造の走行・傾斜の特性によって、凹地形の形成は制約を受けることが示唆される。
伊豆半島には、古墳時代に凝灰岩を利用した痕跡が様々なかたちで残されている。この利用の実態を明らかにすることを目的として、3次元計測を用いた加工技術の検討と蛍光X線分析を用いた採石地の推定という2つの側面から調査を実施した。調査の結果、石櫃と石棺では同様の精緻な加工技術が用いられており、横穴墓にはそれらと異なる粗い加工技術が見られた。このような技術が地域の中で様々に、長期間にわたって用いられていることから、技術の使い分けと世代間の継承があったことが考えられる。また、採石地の調査では、沼津市口野周辺と伊豆の国市長岡周辺が示され、沿岸部の局地的な採石とともに必要に応じて内陸部でも採石を行っていたことが示唆された。
近年、南方系ホンダワラ類が日本沿岸の温帯域で分布を拡大させており、生態系等への影響が危惧されている。本研究では、伊豆半島沿岸における南方系ホンダワラ類の分布状況を明らかにするとともに、南方系ホンダワラ類の遺伝的多様性を明らかにすることを目的とした。
調査の結果、伊豆半島西岸において南方系ホンダワラ類(ヒイラギモク、ツクシモク)の生育が確認された。伊豆半島沿岸における南方系ホンダワラ類の分布拡大は確認できなかった一方、藻場環境の悪化が懸念された。
系統地理学的な解析の結果、伊豆半島沿岸に分布する南方系ホンダワラ類は近年分布を広げて伊豆半島沿岸に定着したというよりも、個体数の大きな増減を繰り返しつつ比較的古くから継続的に分布していたことが示唆された。