2022.12.25
11月26日は「いい風呂の日」。静岡県温泉協会さんとの共催でジオカフェ「おんせんはたいへん」を開催しました。
半島の各地に温泉がわく伊豆半島。毎回温泉地ならではの「入るだけではわからない」事情をテーマに取り上げます。
今回のテーマは「共同湯」、別府、湯布院に次ぎ、日本でも3番目くらいの湯量を誇る伊東温泉が会場です。
町内には複数の共同湯がありますが、このところ存続の危機に。なんとかしたい!という地元の思いから今回の企画が立ち上がりました。
当日は、なんと共同湯のある温泉会館を丸ごと貸切させていただき、入浴もできてしまうという贅沢なイベントとなりました。
イントロではジオパークの朝日研究員より、伊東温泉がどういう温泉なのか、について解説。
伊豆半島の地温分布図を見ると、60〜30万年前くらいまであちこちで噴火していた火山の余熱が残っていて、熱川、河津、南伊豆などに続き熱海や伊東、修善寺などは中でも温度が高い地域です。
伊東の温泉は溶け込んでいる成分が少ない単純温泉で、主に雨水が地下で温められて湧き出しているのだそうです。
松原区の共同湯を管理する井原区長は伊東の温泉の歴史について話をしてくれました。
江戸時代、築城石をはじめ炭などを船で運び出していた時代から、お伊勢参りや温泉巡りが流行ったり、戦争の頃は転地療養の土地としてなど、伊東は常に賑わっていたとのこと。
そんな中で温泉地ならでは文化が生まれたこと、またそれぞれの共同湯が立地によってそれぞれの性格を持っていることなど教えてもらいました。
続いて共同湯の魅力探しワークショップ。地元のジオガイドで若手フォトグラファーの大竹翔さんがサポートしました。参加者が撮った写真はスクリーンで紹介。同じ空間を前にしても視点が色々なので興味深い。
午後の部は、ひなびた温泉研究所ショチョーの岩本さんの講演でした。岩本さんは元々広告代理店でのコピーライターをされてきた方です。
岩本さんは、ひなびた温泉好きが高じて、日本各地の「ひな泉」を開拓してきました。
マーケティング戦略によって世の中の好みに沿ったように作られた温泉は、想定内で驚きがない。
ひなびた温泉や共同湯が好きという岩本さんは、その魅力を「想定外で天然なところ」と言います。
熱い湯にはコミュニケーションが生まれる、蛇口にはドラマがある、などの”コピー”に、にやっとさせられます。
この日の会場の共同湯についても、建物が古いから…ということはむしろ大事にして、今回のワークショップで参加者が撮ったような写真を採用したりして、パンフレットやビジュアルを変えつつ、ターゲットを絞り込んで「コミュニケーションを深く」していったら良いですよとのアドバイスをいただきました。
最後に今回の会場となった岡区長の虫明さんより、これまで地元の福祉的な要素で運営してきた共同湯だが、一度は財政難により閉館しようということになった。
ただ地元からの存続を求める声が強くあり、そのために模索していること。その中で源泉掛け流しを楽しめる共同湯を地元だけでなく外に向けても開いていくように方針を転換したことなどお話がありました。
今回の講演を聞いて、「待てよ、新しい施設は確かにいいかもしれないが、これはもっと考え直すことが必要かな」と考えたとのこと。存続のためのアイデアにつながっていたら良いなと思います。
今回のイベントで、共同湯に入るのは初めて、という方もいらっしゃいましたが、きっとそもそもそういう方は多いのではないかと思います。
ぜひ一度、街角のあの暖簾をくぐってみようかな、というきっかけにしていただけたら幸いです。