伊豆半島ジオパーク Izu Peninsula UNESCO Global Geopark

伊豆半島ジオパーク プレスリリース

現地審査報告

2017.08.08

伊豆半島ジオパークのユネスコ世界ジオパーク認定に向けた現地審査が7月25~27日にかけて行われました。ユネスコ世界ジオパーク事務局が派遣した審査員2人(イブラヒム・コモー審査員(マレーシア)とアレックス・アンドラサヌ審査員(ルーマニア))は、11カ所のジオサイト、2カ所のビジターセンターを含む17カ所を視察しました。その概要を報告します。

初日(7月25日)

ジオリア(8:30~11:30)

現地審査は伊豆半島ジオパークミュージアム「ジオリア」からスタートした。冒頭、菊地豊会長(伊豆市長)は「審査を通じて、われわれが何をしてきたか、何を考えているか、そしてユネスコ世界ジオパークへの貢献として何ができるかを見てほしい」とあいさつした。続いて小山真人顧問が申請書に盛り込まれたジオサイトを中心に、伊豆半島の地質的価値を強調するプレゼンを行った。

わさび沢(11:55~13:00)

審査員は伊豆市湯ヶ島のわさび沢をわさび農家・浅田芳孝 (あさだ・よしたか) さんの案内で視察した。浅田さんは、わさび栽培には13~15度の豊富な水が必要なことを指摘。その上で、天城山麓が日本有数の多雨地域となっていること、土壌が水を通しにくい海底火山の噴出物の上に、水を通しやすい鉢窪山の火山噴出物が堆積していることから、適温で豊富な湧水が出ていることを説明して、「わさび栽培の適地になっている」と強調した。
審査員は初めて見るわさび栽培のもように興味津々だった。実際にわさび沢に降りて、わさびを収穫。アンドラサヌ審査員は「これでわれわれ二人はワサビブラザーズになった」とのジョークを飛ばした。その後、昼食時に収穫したわさびをすりおろして実際に食べた。

黄金崎(15:10~15:40)

堂ヶ島のジオクルーズが強風のため中止になったことに伴い、堂ヶ島に向かう途中、一行は黄金崎に立ち寄った。狩野謙一(かの・けんいち)静岡大学名誉教授や仲田慶枝(なかた・よしえ)ジオガイドが熱水変質によって、このような黄金色に変質したことを説明した。
審査員は「馬ロック」と呼ばれる馬そっくりの岩に感心した様子で、しきりに写真を撮っていた。

堂ヶ島(16:00~17:00)

狩野謙一静岡大学名誉教授は、一帯に広がる白いしましま状の地層、黒い火山弾、礫混じりの水冷破砕溶岩などを示して、当地が海底火山の活動によって形成されたことを解説。当地が本来ならば海底にあって見えないものを間近に見ることができる貴重な場所であり、海底火山のメカニズムの解明に貢献したことを強調した。
審査員からは「子どもたちを案内するときにどのような注意を払っているか」との質問があり、仲田ジオガイドは「子どもたちといると、予想しないような質問が出てくるから楽しい。自分たちの育った郷土のことを誇りに思ってほしいという心づもりで語っている」と答えた。
当初予定されていたジオクルーズは荒天のため中止となった。

一色(17:10~18:00)

一色町内会の約50人が枕状溶岩をデザインした小旗で出迎えた。松崎高校サイエンス部は枕状溶岩がどのようにできるかをビジュアルに示した紙芝居や、枕状溶岩再現実験の映像などを審査員に披露した。また山本昭作(やまもと・しょうさく)一色枕状溶岩ジオサイト保全協議会会長が、貴重なサイトを守るため、町内会や松崎高校生らが中心となって樹木の伐採や草刈り、こけ取りを続けていることを強調した。さらに、町内会はオレンジやまんじゅう、ゼリーで一行をもてなした。
審査員は「住民と一体となった取り組みはすばらしい」と称賛。再現実験については「実際の溶岩は高温なので、もっと温度を高くしてみたらどうか」「まくよー君を使った冒険ストーリーを作ってみたら」などと松高生にアドバイスした。
  

2日目(7月26日)

松崎町歩き(8:00~8:45)

審査員はジオガイドの佐野勇人 (さの・はやと)さんの案内で松崎の朝の散歩を楽しんだ。佐野さんはなまこ壁の建物を前に、なまこ壁の伝統的な製法を説明した。
高さ12mの津波避難タワーでは、静岡県の危機管理監を務めた岩田孝仁(いわた・たかよし)静岡大学防災総合センター長は静岡県が世界でも有数の防災に取り組んできたことを強調した。また、ふじのくに防災フェローでもあるジオガイドの仲田慶枝さんは地域で防災ワークショップを開いていると説明した。

子浦(9:30~11:30)

審査員は、シーカヤックショップを運営している武田仁志ジオガイド(たけだ・まさし)のコーチでシーカヤックを体験した。一行は、子浦を出発し、マグマの岩脈が貫入している「蛇下り(じゃくだり)」を望める沖堤までを往復。途中、海食洞に入るなど冒険気分に浸った。
あいにくうねりが残っていて、蛇下りの直下までは行けなかったが、絶景に思わず「オー」と歓声を上げた。またすぐ隣で地層の色が灰白色と黄褐色と異なっている違いを質問していた。審査員が「世界になると何か変わることがあるか」と尋ねたのに対し、武田さんは「シーカヤックを楽しむ外国人は年々少しずつ増えている。そのような海外からのお客さまにアピールできるようになるし、弾みになると思う」と答えた。たまたま高校生を乗せたジオクルーズの漁船がすれ違い、手を振ってこたえていた。
 

南伊豆町ビジターセンター (11:50~12:35)

VCの眼前に広がる断崖続きの絶景を前に、狩野謙一静岡大学名誉教授が海底火山の活動によってできた地形であることを解説した。審査員は「観光的な景観と地質的な要素がそろっている最高の場所だ」と評価した。
館内では村田順二センター長(むらた・じゅんじ)が7月23日に来館者が20万人に達したことを報告し、塚本春菜 (つかもと・はるな) ジオガイドがVCの機能や扱っている商品を説明した。審査員からは「VCの維持費はどのようにしているか」などの質問が出た。

土屋晴樹ジオガイドの説明(13:00~14:00)

昼食時間を利用して、土屋晴樹(つちや・はるき)ジオガイドが西伊豆町や松崎町における学校教育現場でのジオ教育の取り組みを報告した。

鍋田浜(14:20~15:00)

審査員は安政の地震で発生した津波によって運ばれた津波石を視察した。北村晃寿静岡大学教授(きたむら・あきひさ)はこの地域の地層が過去の津波研究に非常に役立ち、現在も続けられていることを強調した。さらに齊藤武(さいとう・たけし)ジオガイドが子どもたちの磯観察会を行っていることを紹介し、津波石を使って防災教育、環境保護教育に取り組んでいることを説明した。

下田町歩き(15:05~15:40)

ペリー上陸碑の前で、下田小学校4年の若林和海(わかばやし・のどか)さんら6人の小学生が校歌を歌って出迎えた。さらに了仙寺まで続くペリーロードを一緒に歩き、プレゼンを行った。小学生は伊豆石に硬軟2種類があること、近くに石切り場が残っていて不思議な雰囲気を醸し出していることなどを手書きのフリップを使いながらはきはきと説明した。
審査員は一緒に記念撮影に収まるなど、終始和やかなムードだった。
 

ジオトレイン(16:15~16:55)

審査員は伊豆急下田駅から伊豆高原駅までジオトレインで移動した。鈴木孝明(すずき・たかあき)伊豆急行観光推進部長は同社がジオパーク活動に全面的に協力しており、全国でも例を見ないジオトレインを運行していることを強調。車内に掲示された各地のジオサイトを紹介する写真ポスターを案内した。また内藤美奈子(ないとう・みなこ)ジオガイドは1986年の大島噴火の際、島民が稲取に避難してきたときの体験談を披露。自身がジオガイドとして活動するきっかけになっただけでなく、伊豆大島ジオパークと伊豆半島ジオパークが連携していることも説明した。審査員一行は伊豆高原駅で社員総出の出迎えを受けた。
 

最終日(7月27日)

大室山(8:30~9:50)

審査員は、小野達也伊東市長、稲葉明夫(いなば・あきお)池観光開発社長の出迎えを受け、田畑朝惠(たばた・あさえ)ジオガイドの案内で大室山を視察した。田畑さんは大室山から噴出した火山弾や、ビューポイントから望める矢筈山、一碧湖などが火山による造形であることを解説。さらにコーラを使った火山実験を実演し、「小学生らを連れてくるときはこのように案内している」と説明した。
コーラ火山実験で勢いよくコーラが噴き出すと、審査員から「good show!」との声が上がった。

城ヶ崎海岸(9:55~10:55)

城ヶ崎海岸のいがいが根では静岡県伊豆観光局の吉川馨(よしかわ・かおる)主査が県の遊歩道を活用したジオトレイル事業について説明。さらに田畑ジオガイドはタイトゴメ、ハマゴウなどいがいが根にたくましく根付いている植物について「葉に潮風を防ぐ独自の仕組みができているので、荒れ地のパイオニアと言える」と紹介した。一行は、波の力で岩が球体に削られたポットホールを見学した。
審査員からは「遊歩道のパンフはあるのか」「(案内板に)スタディコースと表示するのなら、教育プログラムだと誤解されかねない」などの指摘が出た。
 

ジオテラス伊東 (11:25~12:10)

審査員は、伊豆高原駅前で行われていた「伊豆の海藻で海のアーチストになろう!」を視察した。イベントの講師・野田三千代(のだ・みちよ)さんは「海藻は海の森。世界一の伊豆の海を守っていくためにこのワークショップを開催している」と意義を伝え、審査員も飛び入り参加で海藻おしば制作にチャレンジした。
その後、審査員はジオテラス伊東を視察。西谷雅治(にしたに・まさはる)ジオガイドらは大室山、城ヶ崎海岸などにこれから行く人も行ってきた人にも楽しんでもらえるように展示を工夫していることを強調した。

西丹那駐車場(13:10~13:30)

朝日克彦(あさひ・かつひこ)専任研究員が西丹那駐車場からのパノラマを前に、伊豆半島がフィリピン海プレートにのって引き続き本州を押し続けていることや丹那断層の概況を説明した。

オラッチェ(13:50~15:05)

昼食時を利用して、大坂規久(おおさか・のりひさ)ジオガイドが丹那トンネル工事によって渇水に見舞われた同地が稲作から酪農に転換した歴史を説明。マックスバリュ函南店の西島尊(にしじま・たける)店長がジオを活用した商品開発に取り組んでいること、住麻紀(すみ・まき)さんが丹那断層をテーマとしたアートプロジェクト「クリフエッジプロジェクト」を展開していることをそれぞれ紹介した。
審査員は地域の企業や住民が参加する形で、多様なジオパーク活動が展開されていることを高く評価した。
 

断層公園(15:10~15:40)

大坂ジオガイドが1930年の北伊豆地震を引き起こした断層を解説。大坂さんは「ここは災害遺構として国の天然記念物に指定された。当時としては画期的なことだった」と強調、地表のずれが観察できる場所を案内した。
審査員が写真を撮影していると、大坂さんは「今にも断層が動いてしまうといけないので、皆さん、早くこちらへ移ってください」とのジョークを飛ばし、周囲を爆笑の渦に巻き込んでいた。

火雷神社(15:55~16:15)

最後の審査場所となった火雷神社では、地元・田代区の住民約20人が出迎えた。室伏毅(むろふし・つよし)田代区長は「ここは北伊豆地震で大きな被害を受けた。災害の記憶を残そうと、断層で崩壊した鳥居やずれてしまった石段を保存している。毎月3回、清掃して守っている」と説明。次いで大坂ジオガイドが断層でずれた痕跡を解説した。
審査員は「人々は災害を忘れようとするが、あえてそれを残そうとしているのはすばらしい」と評価、記念撮影に収まった。最後に、神社前に保管されている「訪問ノート」にサインした。

以上

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